第一章 楽園
何処までも果てなく続く 大地と海
母の如き 慈愛入り混じる空の色彩
天空 唯一点から光射す 御天道様は無いけれど
万物万事皆輝き 宙漂う月も 心無しか眩しそう
学び舎に競う子ら 我れ先と探し求め
むつかしき 課題手に取り 乱舞する
常春の 演舞台
時告ぐ 輪舞曲
歓喜の 楽演隊
居並ぶ子ら 希望と幻想
胸躍らす子 不安と期待
ふらつく子 背負う課題
瑠璃色の目と目 碧き星に棲む
未来の母と父 円らなる瞳と瞳
第二章 生誕
愛と色 契る口づけ 卵と精 一瞬の交錯
リボ核酸 二重螺旋 核 ミトコンドリア
血と骨と 肉とが絡み 象る裸
大海原乱舞する イルカが如く
膝を抱き 羊水に浮遊し続ける
堅く閉じた瞼と 外界を知らぬ肺
母なる者が宿す 深遠な因果地平
此れは"一瞬"の出来事?
其れとも"永遠"の枠組?
此れが"戒律"なのか?
其れとも"因果律"か?
喫緊の静謐 温かな紅の暗闇
声を失くした鐘 誰が鳴らす
第三章 審判
猛り狂う森閑 流さるる僕
堅牢壁は破られ 決壊せり
噴出する沈黙 乳血色の水
猛獣が巣食う 下界の息吹
恐怖と闇と高鳴る鼓動
圧し返せし波 波 波
獣が如き 息遣い
纏わり絡む 粘膜
圧される腹 目は開かず
叩かれる背中 潰れる鼻
蹴られる尻 口は塞がれ
頬は圧迫され もがく指
震える月は 彼方に蒼く
真空揺さ振る エーテル
高鳴る時の唄 動き出す発条
絡み合う歯車 舞う踊り子ら
共鳴する 叫び
泣き叫ぶ 子
笑う 大人
祝福なり歓喜
静かに廻る
地球の鞴
そぉっと寄せらるる 紅き頬
口づけは マシュマロが如き
体液と血と
汗と尿と
涙をも
拭う
第四章 回帰
きみよ 課題は為したか?
きみよ 目的は遂げたか?
背負う 最後の荷 六道銭
さぁ 行きなさい!
浄玻璃鏡の前へ
さぁ 映しなさい!
此の世の全てを
さぁ 還りなさい!
約束の地平球へ
白く棚引く煙 彼方に消え
トランペットは 壊された
聖夜の宴 其のあとで
ちっちゃな 御骨
ざらついた 遺灰
逝く者 来る者 遺る者
此の世と 彼の世と
行きつ 戻りつ