思考錯誤屋の呟き

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現場主義者の考える、情報が小出しにされる理由

企業が不祥事を起こした際、情報が小出しにされると、マスコミが賑やかになりますね。
最近では、とーでんの問題でしょうか?

企業がマンモス化(←旧い表現ですね)するほど情報発信が遅くなり、情報が小出しにされてしまうのには、一つ、理由があります。

断っておきますが、企業側の論理を振りかざす訳ではありません。念のため。


情報が小出しにされるのは「後ろめたい」とか「何かを隠したい」という感情論もあるでしょうが、根本的な問題は、上層部へ情報が伝わらない仕組みが存在する事です。

「何故、言い切れるのか」って?

以前、僕は派遣会社に属していました。
派遣される側の社員としてだけでなく、派遣する側の社員としても組織に属し、派遣業界の内情をそこそこ知っています。

例えば、報道で一時期騒がれた二重派遣偽装請負の問題について、法的には以前より禁止されている事ですが、二重派遣は今もって存在します。

派遣する側として、あの手この手と駆使して法律を掻い潜る方法も知っています。
一つ、簡単な例を挙げるなら、「二重派遣する際は、請負契約に切り換えてしまう」方法が、未だに有効です。


タイトルが「情報が小出しにされる理由」なのに、何故ここで派遣業界の話しをするかと言うと、大変な現場ほど正社員ではなく派遣社員が支えているから、です。


さて、請負契約によって派遣されている派遣社員が、派遣先企業の現場で何らかの問題を発見した場合、真っ先に報告をするのは何処だと思いますか?

「派遣先の企業だろう?」と思った方へ。

派遣社員は、派遣先の企業へ報告する前に、自分が所属する請負元の企業へ報告します。
何故なら請負契約の場合、派遣先の企業に現場の指揮・指示権は無いからです。

報告を受けた請負元の企業は、派遣社員の報告内容を確認し検討します。
対応が決まったところで、請負契約をしている派遣先の企業へ連絡を入れますが、この間、何らかの問題を発見した派遣社員が、派遣先企業へ直接報告する事はありません。何故なら、直接報告する事は法に違反し、偽装請負偽装派遣と見なされるからです。

このような仕組みの存在だけでも、現場の生の情報が、情報を必要としている派遣先企業に伝わらない事が判るでしょう。

加えて、請負契約の場合、更に別の派遣企業から派遣社員を受け入れる事が出来ます。

因みに派遣契約は、派遣先の企業に現場の指揮・指示権があり、請負元の企業が別の派遣企業から受け入れた派遣社員に対して、直接、指示・指揮する事が可能です。


「派遣契約ならば、情報が正しく派遣先に伝わる」と考えた方へ。

実際は、残念ながら正しく伝わらない事の方が多いのです。
その理由は、大半の派遣企業が「派遣先で何か問題を生じた場合、派遣先企業への報告の前に派遣元へ連絡を入れる」ように、派遣社員の教育をしており、派遣社員の大半が従います。

もっとも、派遣社員の中には、真っ先に派遣先へ報告する人も居るかも知れませんが、その派遣社員は次の仕事を得難くなるでしょう。


これら派遣や請負契約の仕組を踏まえた上で、タイトルの「情報が小出しにされる理由」を考えて見ます。

不測の事態が生じている現場に、正社員ではなく別会社の人間が多数入っているとしましょう。
現場を直接把握している担当者は、二次請、三次請の後に派遣されている派遣社員(←四次請と同じ扱い)だとしたら、現場の情報は、正しく上層部へ伝わるでしょうか。

加えて、正社員でいる事が難しいこの時世で、不測の事態に対応せざるを得なくなった数少ない正社員は、上層部へ正しく情報を挙げる事が出来るでしょうか?


「ホウレンソウ」のような標語が活きたのは、過去の事です。派遣や請負という仕組みが、情報を遅延させ伝達内容を狂わせるのです。
本当に情報を欲している人の所へ情報が届かないのは、このような下らない仕組みの存在がある事を、どれだけの人が知っているのでしょう。

もしも本当に情報を得たいのならば、直接現場へ行き、自分の目で見、自分の耳で聞き、自分の肌で現場を体感して下さい。
TVやラジオ、新聞などの報道を介した、誰かのフィルター越しの意見ではなく、出来るだけ生の現場に触れて考える事。これが一番です。